テレワークのコミュニケーションに課題を感じている企業は少なくないでしょう。特に、気軽な相談や雑談が減り、「経営方針の浸透や一体感の醸成が難しくなった」という声はよく聞きます。
そこで、フルリモート組織として、創業から100名近くの社員を抱えるまでになったoVice社が取り組んできた社内コミュニケーション施策を共有するイベント、「oVice流!働き方&懇親会で役立つ社内コミュニケーション活性化セミナー〜フルリモート×メタバース組織の忘年会・新年会とは?〜」を2022年12月13日に開催しました。
本記事は、セミナーの内容をもとに社内コミュニケーション施策のポイントをお届けします。
■登壇者
森園凌成(@morizooo0825)oVice株式会社 Marketing・PR Contents Director
中村知嗣(@tstg_63)oVice株式会社 BizDev Kitchen Unit Manager
社内コミュニケーションの施策を考えるための第一歩は、課題を特定することです。いくつかの調査をもとにコミュニケーション課題の正体を考えてみました。
以下のスライドに“よくあるテレワークのコミュニケーション課題”を並べています。程度の差はあれど、多くの企業の方が抱えてることが集約されていると思います。
ただし、課題の優先度については、どの人から見るかによって変わるようです。
『総務省令和2年情報通信白書』によると、テレワーク企業の現場メンバーが感じる課題感の中で、コミュニケーションに関するものは「同僚や上司などとの連絡・疎通に苦労した」「営業・取引先等との連絡・疎通に苦労した」でした。現場は報告・連絡・相談に悩みを抱えていることがわかります。
以下のスライドに“よくあるテレワークのコミュニケーション課題”を並べています。程度の差はあれど、多くの企業の方が抱えてることが集約されていると思います。
一方、パーソル総合研究所の『テレワークにおける不安感・孤独感に関する定量調査』によると、上司の抱えてる課題のTOP2は「業務の進捗状況がわかりにくく、不安に思うことがある」「非対面のやりとりは、相手の気持ちが察しにくく不安だ」です。マネジメント上の課題があげられています。
他にも、いくつかの調査が出ています。oViceでは、これらのコミュニケーションに関する課題を大きく3つにまとめました。
1つ目は、コミュニケーションの絶対量が不足していること(コミュニケーション不足)。
2つ目は、部下と上司、経営と現場、同僚間でお互いの行動や状況が見えづらくなっていること(人の存在が見えない、希薄化)。
3つ目は、コミュニケーションを取るための時間的・精神的コストが大きくなっていること(コミュニケーションコストの増大)です。
この3つをコミュニケーション課題の正体と捉え、oViceはさまざまな社内施策を行ってきました。
上記で掲げた3つの課題の対策として、私たちは以下の5つの施策を行っています。
それぞれ簡単に説明します。
社内交流の機会は、全員参加・任意参加のものを含め、かなりの数を行っています。
もっとも歴史が長く全員参加で行っているのは、毎月、最終金曜日の夜に開催する「oVice Night」。前半はCEOのジョン・セーションや経営陣から会社や事業について共有する「戦略共有会」、後半はHRチーム主導での新メンバー紹介や、食事(同じものが配達される)・ゲームを楽しみながら交流する「社内交流会」の2部制になっています。
イベントなどの同期的な機会だけではなく、非同期の仕掛けも用意しています。特に、工夫しているのはSlackの活用方法。
一人ひとりが気づきや働く様子をシェアする「timesチャンネル」、働くなかで嬉しかったことをシェアする「happyチャンネル」、テーマごとに情報をシェアする「socialチャンネル」(最近は、子供と猫のチャンネルが人気)など、業務の枠組み外でつながる手段をたくさん用意しています。
▼詳しいoViceのSlack活用術はこちらで紹介しています。
Wantedly|全世界フルリモートのoVice社流Slack活用術。日々のコミュニケーションからバリューを体現するには
2つ目の対策の方針は、コミュニケーションの量ではなく質に関するもの。oViceでは、働きやすく成果の出る組織を作るための「コミュニケーションスタンス」を設定しています。
「コミュニケーションスタンス」
社内のNotionには、「Slackスタンプの推奨」「リアクション機能の推奨」「対お客さまと同じ言葉遣い」「“社員”などの受け身になる言葉遣いの回避」など、具体的な行動をまとめています。
3つ目の対策の方針は、oviceの徹底活用です。会議、商談、面接、オンボーディング、個人作業などすべてのコミュニケーションを、基本的にovice上で行うことにしています。
また、ovice上でのコミュニケーション文化として、「顔出しはなしで良い」「別部署の会議の聞き耳もOK」などの方針を共有しているんです。
4つ目の対策の方針は、情報格差をなくすこと。直接コミュニケーションをとった人以外にも内容を共有できるよう、ミーティングや口頭で話すことはすべて、誰でもアクセスできる場所にログで残しています。
さらに、コミュニケーションの種類によってツールを使い分けているんです。Slackは、“人(チャンネル)”に紐づくコミュニケーションとして、気軽に何でも話せる、流動的な会話をする場所。
Asanaは、“コト(タスク)”に紐づくコミュニケーションとして、仕事の構造化・明確化・見える化をする場所。
Notionは、“コンテクスト”が整理整頓されている、テキストやファイルの置き場所。
このように、「いつでも」「だれでも」目的に沿った情報が得られるようにツールの目的を分け、使い方を周知するようにしています。
5つ目の対策の方針は、個人がどんな状態なのか、どんな環境で働いているのか、稼働できるのか休んでいるのかなど、自分自身のステータスを積極的に共有するようにすることです。
そうすることで、話しかけていいタイミングがわかったり、休みの日に依頼が重なることを防げたり、円滑なコミュニケーションを実現しています。
以上の5つがoViceが日々取り組んでいることになります。この5つに共通するのは、「働く上でのルールや雑談がしやすい環境づくり」と「意図的なコミュニケーションづくり」です。
偶発的なコミュニケーションが生まれる仕組みを多くつくるとともに、それが文化に根付くまでは会社側が意図的に機会を創出する必要があります。この2つを意識した施策を行うことで、コミュニケーションは活性化すると考えているんです。
もう少し具体的にやっていることを知りたい方もいると思うので、続いて『ovice Event』(注:旧ovice宴会)マネージャーの中村さんにマイクを渡し、oviceで行う懇親会について共有します。
ovice Eventマネージャーの中村です。よろしくお願いします。僕からは、森園さんが話した5つの方針の1つ目、「懇親会などの社内交流の機会づくり」の例として、ovice Eventのことをお話しします。
ovice Eventとは、美味しい食事と楽しいゲームコンテンツがワンセットになった、バーチャル空間上で行う新しい宴会です。
何度も社内で実践し、またお客さまに提供した経験をもとに、オンラインで行う懇親会・宴会で効果を出すための3つの工夫をまとめました。
オンラインの懇親会はオープニングが大切です。会の初めはまだ空気感が出来上がってなかったり、別々の環境からアクセスしていたりするので、参加者に気持ちのばらつきがあります。
そこで、oViceでは乾杯や司会の挨拶、オープニング動画などを使って、みんなの意識を集め、一体感を醸成するようにしているんです。また、日常ではカメラオフで音声のみのコミュニケーションをとっていますが、会の始まりだけはカメラオンにします。お互い表情を確認でき、心理的安全性が高まることで、その後のコミュニケーションが活性化するんです。
2つ目の工夫はリアクション機能。リアルなセミナーでも、聞き手側からのリアクションがないと話しづらいですよね。オンラインではなおさらそうなので、「clap」などのリアクション機能を意識的に使うことが大切です。
コツは、進行役のメンバーが率先して使うこと。すると、場に伝播していって視覚的にも盛り上がりが伝わります。高揚感が増して、イベント自体の満足度が高まるんです。
中村:3つ目の工夫は、ゲームやコンテンツなどの交流を促す機会を用意することです。人数が少ない場合は団体戦のコンテンツに、人数が多い場合は個人戦になど、さまざまな工夫ができます。
また、こうしたコンテンツは懇親会の中のどこに配置するかによって効果が変わる。交流会の冒頭でやるなら、参加者の緊張を解くアイスブレイクに、交流会の後ろでやるなら、最後の盛り上がりをつくるエンディングになります。
実は、さきほど森園さんの話で出てきた「oVice Night」は、上記の3つのポイントを考慮して企画しています。
第1部の「戦略共有会」で人気なのは、CEOのジョンがメンバーからの質問に直接答える「ねぇねぇジョンさん」というコンテンツ。
ジョンがフランクな格好でカメラの前に姿を現し、原稿を用意するわけでもなく、その場で質問に答えていくことによって、情報の透明性が担保されています。結果、社内に納得感が醸成され、目標達成への意欲や工夫が生まれているんです。
また、第2部では、「ovice Event」の仕組みを自社活用して、メンバーの自宅に豪華な食事を届け、食事をしながらゲームコンテンツを楽しんでいます。
「同じ料理を食べると自然と会話が生まれる」「部署の垣根なく、いろんなメンバーと話せて刺激がもらえる」などの感想を毎月もらっています。食事があることとコンテンツがあることで、横の繋がりが生まれ、メンバー間の理解も深まり、心理的安全性を高められているんです。
ちなみに、毎月変わるメニューで人気を博したのは、うなぎでした(笑)。家にいながら暖かいうなぎの弁当が食べられる体験は、oViceならではだったと思います。
森園:以上がoVice流の社内コミュニケーション活性化施策と、その具体例であるovice Eventのご紹介でした。今後も私たちは、テレワークコミュニケーションのグローバルスタンダードを作るために試行錯誤していきます。皆さんと一緒に、新しい働き方を生み出していけたら幸いです。