イベントレポート

日本の教育の課題は?教育現場の最前線で活躍する3社の声をお届けするパネルディスカッション(イベントレポート:後編)

2025-04-17

2025年3月1日から提供を開始した教育機関向けの新サービス「ovice campus」の発表とあわせて開催したオンラインイベント「オンライン教育最前線!教育フロントランナーの現状と今後」。

イベントでは、ベネッセ、英進館、NIJINといった教育の最前線で活躍する企業の方々をお招きし、各社の取り組みをご紹介いただくとともに、後半では日本の教育の現状と課題、そして未来についてのパネルディスカッションを実施しました。

このブログでは、パネルディスカッション内で各登壇者さまより発信された日本の教育が抱える個性の尊重に関する課題、オンラインとリアルを融合した新たな学びの可能性など、教育現場からのリアルな声をお届けします。

【イベント登壇者】

株式会社ベネッセコーポレーション ベネッセ高等学院 学院長 上木原孝伸さま

英進館ホールディングス株式会社 バーチャルキャンパス校舎長 太郎浦智晶さま

株式会社NIJIN 代表取締役 CEO 星野達郎さま

oVice株式会社 代表取締役CEO ジョン・セーヒョン、教育分野担当 市川賢典

教育モデルの変革が鍵――個性を伸ばす環境作りと日本の教育の課題

市川:まず、オンラインが普及する前後での日本の教育の課題について、それぞれが感じていることを教えてください。

太郎浦さま:私が特に感じているのは、学力の格差が広がっていることです。中学受験をするかしないか、進学する高校の選択によっても差が生まれています。最近は、特定の公立高校が一般入試を介さずに生徒を確保する動きも増えています。受験勉強にあまり力を入れなくても合格できる学校が増えているため、学力の二極化がますます進んでいると感じます。

市川:学校の勉強に興味が持てず、別の方向に興味を持つ子どもも増えているように思います。上木原さんが感じている課題感はありますか。

上木原さま:私自身長く教育業界におりますが、映像授業が始まる以前は、オンラインの学習がここまで広がるとは思っていませんでした。今や映像授業は当たり前のものになっていますが、オンラインの学習環境がすべての子どもに合うわけではないと感じます。リアルな教室での授業の良さは、教師が生徒の理解度を直接把握できることです。モチベーションの管理方法も人それぞれ異なり、オンラインだけでは完結できない部分もあります。AIや優秀な講師による指導も重要ですが、生徒をしっかりとコーチングできる存在が必要だと感じています。

市川:オンラインの強みは「1対1000」のような大規模授業が可能なことですが、確かにインタラクティブ性の不足が課題ですね。星野さんはどのような課題があると感じますか。

星野さま:先日、ICCサミットという福岡でのイベントに参加した際、NIJINアカデミーの小中学生が登壇し、2部門で受賞しました。その中には、5年間学校に通えず、1年前まで引きこもりだった生徒がいました。そうした子は、これまでは「かわいそうな子」と見られてしまいがちでしたが、今回のICCの場では数百人の起業家を前に堂々とスピーチして感動させ、ヒロインになれた。これは大きな変化です。リアルな学校には行けなくても、違う環境に行くことでその子の価値が評価される。このギャップこそが、日本の教育の課題を象徴していると感じます。

市川:その生徒が大きく変化できたのはなぜでしょうか。学校に行けなかったことで失われた自信を、どのように取り戻せたのでしょうか。

星野さま:これは教育の構造的な問題が影響していると考えています。学校には一定の基準があり、それを達成できるかどうかで評価が決まります。その基準に合う生徒には問題ありませんが、合わない子どもにとっては非常に苦しい環境です。NIJINアカデミーでは、子どもたちを中心に据え、それぞれの個性を120%発揮できる環境を作っています。学校とは異なる教育モデルを提供することで、従来の教育システムに適応できなかった生徒でも自信を持ち、成功体験を積めるようになっています。日本では「学校に行くのが当たり前」という意識がまだ根強いため、こうした価値観を変えていく必要があると感じます。

成果主義の広がりが問い直す、日本の教育の未来のあり方

市川:不登校の生徒は増え続けていますが、教育の未来についてどのようにお考えでしょうか。

上木原さま:不登校自体は今後も増えると思います。ただ、問題は不登校自体ではなく、社会との接続がきちんとできなくなることです。私自身、N高の立ち上げに関わり、個性ある生徒を何人も見てきましたが、社会がそうした多様な生徒を受け入れる土壌をどれだけ整備できるかが課題だと感じています。悲観的には考えていませんが、社会がどれだけ多様性を尊重し、活躍できる場を用意できるかが、今後取り組むべき課題だと考えています。

市川:確かに、そうした子どもたちに対する社会の受け皿をどのように作るかが課題だとは感じます。私たちoVice社が、そうした子どもが社会に出ても活躍できるよう、オンラインでもしっかり働ける環境を整えること、つまりoviceをさらに普及させていくことも必要かもしれませんね。

英進館さんは、世界から生徒が集まる授業を展開されていますが、ぜひ未来の基盤となる最先端の授業の形と、生の声をお聞かせください。

太郎浦さま:私たちは、誰もが安心して学べる環境を作ることを目指しています。例えば、コロナ前は、生徒が片道2時間かけて新幹線で塾に通い、夜遅くに帰宅するケースもありました。しかし、オンライン学習の普及により、こうした負担を大幅に軽減することができました。オンライン学習は当初、「仕方なく使うもの」と考えられていましたが、技術の進化とともに、その価値が見直され、今では「オンラインの方が良い」と考える人も増えています。オンラインのメリットとデメリットが明確になった今、それらを踏まえて改善を重ねることで、より満足度の高い学習環境を提供できると考えています。

ジョン(oVice CEO):皆さんの話を聞いていて思ったのですが、働く環境がハイブリッドになっているように、教育もハイブリッド化していくと感じました。不登校もハイブリッドになるような未来はあるのでしょうか。

星野さま:すでに、不登校の子どもたちのハイブリッドな学び方は実現されています。例えば、NIJINアカデミーでは、生徒たちが自分たちで修学旅行や学園祭を企画・実施することもあります。

社会の変化にともない、組織に属さない自立型人材が増えていくことは間違いありません。 従来の学校教育を受けた子どもは、サラリーマンや公務員といった働き方に適しているかもしれませんが、オンラインで学んだ子どもは、アーティストやクリエイター、起業家やフリーランスといった職業との相性が良いと感じます。 そうした人材を経営者がどのように評価するかが鍵になりますが、不登校を経験した子どもの中で、柔軟な発想や独自の視点を持ち、可能性を感じる子はたくさんいます。 そうした魅力を感じる企業が増えれば、自然と彼らに適した雇用の機会も広がっていくと考えています。

上木原さま:日本の学校は時間主義の文化が根強く、「何時間、教室に座っていたか」で評価される傾向があります。しかし、社会では成果主義の働き方も増えており、成果主義が合う子どもたちが「不登校」という選択をすることも十分に考えられます。星野さんのお話にもあったように、これは「成果で働く」という考え方に近いものであり、今後はoviceのような環境で学び、働く社会が広がっていくことを期待しています。

ただ、人とのつながりを求める気持ちは誰にでもあるものです。そのため、バーチャルキャンパスを活用しながら、オンラインでの学びや交流を深めつつ、自分の時間も大切にできるようなハイブリッドな環境が実現できると理想的だと感じます。

ovice campusに期待することは…

市川:最後に、ovice campusに期待することについてお聞かせください。

星野さま: 今後、oviceを活用した教育を推進していく上で、社会にインパクトを与える人材をどれだけバーチャルキャンパスに集められるかが重要だと感じています。そのような活動の広がりとともに、オンライン学習を「通学」として認める動きも出てきています。今後は、例えば政治家を招き、オンラインでの学びの場を正式な「教室」として認めてもらえるよう、法整備の働きかけを進めていきたいと考えています。また、こうした活動を地方にも広げ、より多くの子どもたちが新しい学びの選択肢を持てるようにしたいです。oViceとともに、そうした取り組みを実現していきたいですね。

上木原さま: oViceには素晴らしい機能が多くありますが、リアルな校舎を運営する立場としては、コストや運営面の課題も考慮する必要があります。また、AIを活用したコーチング機能が導入されれば、ovice上に「AIカウンセリングルーム」を設けることも可能になるため、そうした新しい試みを一緒に進められたらと思います。

ジョン: 確かに、AIを活用したキャリア教育について、別の企業とも話していました。教育の場においても、AIを活用した新しい学びの形が生まれれば、非常におもしろい展開になりそうですね。

太郎浦さま: 私自身、最初はオンライン教育に対して不安もありましたが、多くの生徒が参加し、大きな反響を得ることができ、かなりの手ごたえを感じているところです。今後もoviceを積極的に活用し、「オンラインでもしっかり結果が出る」と実感してもらえるような事例を増やし、より多くの生徒にとって価値ある学びの場を提供していきたいと考えています。

【イベント前半では各社が最新の取り組みを発表】

本イベントの前半では、各社の取り組みの状況やoviceの活用方法などの発表が行われました。発表内容の記事は以下のURLをご覧ください。

www.ovice.com/ja/blog-jp/campus-event-1

イベント当日のアーカイブ配信ご視聴希望の方は、以下よりお申込みください。

https://go.ovice.com/20250227-registration-archive

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