日本を代表する総合建設会社。地域開発や都市開発、再生可能エネルギー等による発電事業等も手がける。
2024年秋に新本社ビルの竣工を予定している戸田建設株式会社。スマートオフィスの開発を進めており、入居者にとって快適な環境の提供を目指しています。今回は、その新本社ビルでのovice活用について、ICT統轄部DX推進室の室長佐藤さま、主任平林さま、大竹さまにお話をうかがいました。
佐藤:
ICT統轄部DX推進室は、情報システム部門の中でデジタルトランスフォーメーションに関わる分野を担当している部門です。
oviceの社内展開や、様々なアプリケーションのPoC開発、スマートビルディングに関わるプロジェクトなどが担当領域となります。
佐藤:
2024年の秋に新本社ビルができるということが決まって以降、「スマートオフィス」実現に向けた方策をいろいろとさぐっていました。2020年の感染症流行以前のことです。
スマートオフィスについて細部は決定していない段階であった2020年、コロナ禍に見舞われ当社でも在宅勤務が開始しました。その際、オンラインでのコミュニケーションを改善する必要性を感じました。
そこで当部門(ICT統轄部)ではoviceを導入し、オフィス出社か在宅勤務かを問わず、毎日oviceに出社を始めました。
オフィス出社と在宅勤務の双方の勤務スタイルが並存するハイブリッドな状況だったので、部門内でメンバーの勤務場所がわかるよう、在宅勤務のメンバーはoviceに入室後「在宅します」と報告を入れて勤務開始していました。
佐藤:
一体感、一緒にいる感を強く持つことができました。
そしてoviceを運用していく中で、スマートオフィスのコンセプトや実現方法に、何か面白い、これまでになかったものが生まれる、そんな予感を抱きました。
平林:
ICT統轄部DX推進室で挑んでいたプロジェクトの中に、現場の安全カメラの映像をリアルタイムで拠点に配信するというものがありました。こうした映像は、oviceのスペースに配信することもできるものです。
またその頃、oviceスペースの背景画像を、非実在のものから実在のもの、つまり現在入居している仮オフィスを模したデザインに変更しました。このようなoviceスペースを見て、「あれ、これってデジタルツインだ」と気づきました。
このような認識のもと、oviceを活用したデジタルツインでスマートオフィスを設計していくことになりました。
佐藤:
まずそもそもの前提として、フリーアドレスを実施していると「誰がどこにいるのかわからない問題」が生まれますよね。「オフィスの中にいるはずだけれど、どこにいるのかわからない」。こうした事態の解消に、oviceは間違いなく役に立つものだと考えています。
実は、フリーアドレス同様「誰がどこにいるか」を把握しなければならないシステムを、当社はオフィス設備として持っているんです。それは、個人別の「床吹き出し空調」の制御に関するシステムです。
これは、社員の位置情報を把握することで、その社員が選択した座席に備わっている空調に対する操作をできるようになるというシステムです。
平林:
従来の考えですと、この床吹き出し空調と、その付近に存在する座席に着席する社員の持つデバイスを、一対一で連携させていく必要があります。
これは当社の規模ですと、空調と座席のセットは全部で数千個にのぼると思うのですが、その連携を一つひとつ手作業でしていくことになります。
今構想しているのは、この「社員が座る位置」にあたる座標を、oviceのオブジェクトに設定して、そこから操作を行うというもの。oviceのオブジェクトはこれまでoviceで提供されている機能のみ利用可能でしたが、2024年から自社開発も可能になっています。
自社開発による「カスタムオブジェクト」を使えば、社員に固有のデバイスと、その社員が使う床吹き出し空調をovice上で連携させられます。
もし社員が別の座席に座ることになっても改めて登録する必要がなくなりますし、レイアウトを変更した際にも、oviceスペース内のオブジェクトをパソコン画面上で移動させることで同期が完了します。
佐藤:
ビル側は、設備の全てをインターネットに繋いで、それをAPI等で操作できるようにしておくことが必要です。このような環境を用意しておけば、設備や装置に対してoviceからアクションを起こすということもできるようになるはずです。
まずは我々のビルで実装してみて、ゆくゆくはスマートオフィスを使いたいという方に対して販売できるサービスにしていけたらと考えています。
大竹:
社内でのコミュニケーションは、どうしても部署単位になってしまいます。他支店や他部署の方とのコミュニケーションはなかなか起こりません。
そのような組織の常識を、oviceは変えていけると期待しています。「フロアをまたいですぐに移動してコミュニケーションができる」「今、誰が何をしてるのかわかる」そうした価値を戸田建設のスマートオフィスでは先取りして実現していきたいです。
そして、設備との連携も含めたゼネコンならではのoviceのカスタマイズを通じて、自社だけでなく世の中への価値提供につなげていきたいと考えています。
平林:
oviceを導入したスタート時点の課題は「在宅勤務間のコミュニケーション」でしたが、もう一歩先のコミュニケーション課題を解決したいと思っています。
当社は全国に何百もの現場がありますが、その現場と会社とのコミュニケーションは電話だったりメールだったり、もしくは日にちを合わせて直接会うという形になっています。
こうしたやりとりのうち、ちょっとした会話で目的が達成できるものは、oviceの「窓」を使って行えるようになるといいな、と考えています。
「窓」を通じて現場から拠点のメンバーに話しかけられたり、反対に、現場の様子を知りたい拠点のメンバーが現場を覗いてみたり…そうしたことができれば、組織としてもっとよい状態になれるだろうと期待しています。
平林:
現在は、部門のトップが映りこむ画角で設置しています。上席の在席状況を知りたいというニーズは常にありますし、見えることで適度な緊張感を持てるのではと期待しています。
大竹:
oviceの「インサイト」では誰がどのぐらい発言したのかという回数を確認できます。発話によるコミュニケーションができているかどうかを、データとして可視化するのは面白いなと思っています。
平林:
「コミュニケーションの実態が数字で表現されている」ことは、非常に意味のある機能だと思っています。
普段の会話では「なんだかあんまり元気ないのかな」という印象の方が、データから確認すると意外と喋っているということがわかるかもしれません。
反対に、「頻繁に人々の中心となって会議を開催している」という印象の方が、会議以外でほとんどコミュニケーションをとっていない、どちらかというと孤立してしまっている、といった状況が把握できるのです。
社員間のコミュニケーションについて、印象だけでなく実態が見える機能なので、これだけでもoviceを導入する意味があるだろうと感じています。
平林:
いきなり2024年10月の新本社ビル竣工のタイミングで「今日からoviceを使ってください」と言っても、使いこなせなくて、せっかく準備したスマートオフィスが実力を発揮できなくなってしまいます。
そこで、今親和性の高いような部署、具体的に言うと在宅勤務率が高い部署に、oviceを使い始めてもらっています。
そして、実際にoviceを体験しながら使い方を知っていけるような、チュートリアルフロアも準備して、使ってもらっています。
社内全体の利用者を増やしていく際には、パイロット部署を中心として、その方たちからoviceの良さが自然と伝えられていくといいなと想像しています。
当社で開発しているスマートオフィスのためのアプリケーション「T-BuSS*」とも連携させながら社内全体で新しいオフィスを発展させていきたいです。
* Toda Building Smart System
(画像出典:ovice公式YouTube)