システム開発・保守、インフラサービス等の事業を行う。東京本社のほか、全国各地に5拠点を構える。2020年の新型コロナウイルス感染拡大を機に、全社で在宅勤務をスタート。
2020年の新型コロナウイルス流行をきっかけに在宅勤務を全社方針として打ち出した株式会社クエスト。初めての在宅勤務で生じたコミュニケーション面の問題解決のために、セミナーの参加やリサーチで対策を考えてきたものの、なかなか最適解に辿り着けず、「五里霧中」な状態だったといいます。
そこで、同社の中でも先んじてoviceを導入していたマーケティング推進室の取り組みを参考に、全社での導入を決定。今では8階建てのバーチャルビルを所有しています。導入までに考えたことや、運用の工夫をお聞きしました。
井上:
新型コロナウイルスの拡大防止のために在宅勤務を始めたのですが、今まで全く在宅勤務をやってこなかったこともあり、かなり手探りでのスタートだったと記憶しています。
自分たちなりに導入方法や成功事例をリサーチし、知見がない中で移行を進めてきました。ビデオ会議ツールをはじめとする環境面の整備などはうまくいったのですが、いざ始めたとなるとコミュニケーション面でなかなかうまくいかないことが出てきたのです。
一度社内で「在宅勤務の困りごと」をアンケートで回収したことがありました。多く上がったのが「オンラインコミュニケーションの難しさ」。最も多かった「運動不足」に次ぐ件数でした。運動不足と違って、社員の自助努力ではどうしてもコミュニケーション面での問題解決は難しい。なので、会社として何か策を講じなければならないと考えたのです。
さまざまなセミナーに参加したり、書籍を読み込んだりして、在宅勤務のコミュニケーションについて勉強をしてきました。ただそこで出てくるのは「連絡を密にとりましょう」「朝昼と定例しましょう」など、在宅勤務じゃなくても大事と言えそうな知見ばかりでした。
世界的にも「在宅勤務はこうしたらいい」という正解がない中で、正直どうしたらいいかわからない。いわば五里霧中の状態でしたね。
井上:
上司や同僚の様子がわからないため、何か相談や質問といった些細なコミュニケーションを仕掛けたくても、なかなか声をかけられないという人が多くいました。
ビデオ会議ツールは、あらかじめ議題が決まった会議のような話し合いでしか使われず、それ以外のコミュニケーションがほとんど行われにくい状況にあったのです。
こういった状況を打破するために、ビデオ会議ツールを使って上司と部下の1on1や、リモート飲み会なども挑戦してはみましたが、やはり「対面時との違い」が大きく違和感として残り、コミュニケーションの活性化にはなかなか繋がりませんでした。
これはもうツールごと見直さないといけないと思い、ビデオ会議ツールに代わる何か「対面コミュニケーションを再現できる」ツールを探していたところ、マーケティング推進室が使っているoviceが有効なのではと考えたのです。
遠藤:
当社では社員の7割が顧客先に常駐しています。現在はお客様でもリモートワークを導入されていることが多く、当社社員も多くが在宅での勤務を経験しています。
マーケティング推進室の前身部署であった「商品企画開発室」では、新たなビジネスの立ち上げをミッションとして掲げており、コミュニケーションが取りづらいということは大きな問題になっていました。
それまで使っていたビデオ会議ツールではあえて会話しようとしない限り、コミュニケーションは生まれません。一方で、対面で一緒に集まって仕事をしていると、例えば思いついたアイデアを人に話したり、雑談から新たにアイデアが生まれたりなどが期待できます。
オンラインのコミュニケーションであっても、そういった偶発的なコミュニケーションができるツールなのではないか、という期待から、「バーチャル空間をラウンジ的に使う」というアイデアが生まれたのです。
oviceを選んだのは、「一緒の場所」にいることができるからです。それだけでなく、誰と誰が話しているのかが一目でわかり、さらにはその会話に入ったり、また参加していない人を呼べたりなどの機能が、リアルなラウンジと同じような体験を可能にすると感じたからでした。
そして何よりも、コミュニケーションを仕掛ける敷居の低さが決め手でした。
井上:
在宅勤務への移行をきっかけに、会社全体で「働く場所を再定義しよう」という流れがありました。
今までは、何の疑問も持たずに出社して、仕事をして、時間が来たら帰宅する、というのが普通でした。でもコロナ後、在宅勤務が主たる業務環境となっても業務は遂行されています。
こうした時代に、「働く場所」とは、どういう条件を備えたものなのだろうか…そういうことをダイバーシティ&インクルージョン推進室ではずっと考えていました。
そして仮説として「コミュニケーション」「コラボレーション」「イノベーション」の3つが可能な場所が「働く場所」なのかもしれないと考えるようになりました。イノベーションの先には、我々一人一人がオーナーシップを持って仕事をできている状態があります。
これら仮説をもとに、自分達の在宅勤務の状況を見返した時に、どうしてもビデオ会議ツールだと不完全です。その不完全さを電話やメールで補ってみようとしましたが、やはり難しい。
ところがoviceを使えば、不足した部分がなくなる…そう判断して、全社的に利用を促進しようと決めました。
井上:
コミュニケーションの偶発性です。雑談しようにもできないといった状態は、対面時と大きくかけ離れています。oviceを入れることで、対面状態に限りなく近い状態を作れるのではないか、と思いました。
遠藤:
周知するだけでは入ってきてくれないと思ったので、各部門の人に直接説明して、oviceに入ってもらい、スペース上を案内するという地道な作業を繰り返していました。
一度oviceを体験し、リアルオフィスのように雑談できるということに魅力を感じた人が他の人を呼び、利用者は徐々に増えています。当社の従業員数から考えるとまだ半分もいっていない数字ですが、oviceにログインしたことのある人数は400名を超えました。今では8階建てのバーチャルビルになっています。
井上:
ラウンジに役職者を呼んで、oviceの使いやすさやメリットを紹介しているのも、普及を大きく加速させている気がします。他の部門でも、oviceを導入したいという声があがり、広がっていきましたね。
遠藤:
現在は、社内のイントラでよく使う、勤怠管理システムや経理のシステムなどをovice上で見られるようにするなど、「oviceを使う理由」を増やすことも意識しています。
遠藤:
oviceを利用することがより日常的な行動になるように、全社のイントラネットにoviceのリンクを載せ、全社メールで何回か発信を行いました。
そして、ただoviceの存在を知らせるだけでなく、「oviceを使えば楽しいことができる」ということを理解してもらえるよう、いろいろなイベントも企画しています。
例えば、新人研修のオンライン会場としてoviceを使ったり、創立記念式典をバーチャルで行ったりなど。ovice上で行った創立記念式典は、様子を録画し、レポートをイントラ上で公開するなど、より多くの人に届ける工夫を行いました。
式典に参加した方からは「面白かった」というポジティブな声をいただき、参加はしていないがレポートを見た方からは「次は参加してみたい」という声をもらいました。バーチャルオフィスでの活動の良さが、しっかり伝わっていると感じます。
また「入るのは嫌じゃないが単純に忘れてしまう」という声があったので、oviceが自動で立ち上がる設定をアナウンスもしました。
ラウンジの壁紙を毎日変えるなど、飽きのこない工夫も地道にしています。
井上:
今は「在宅勤務推奨」という形をとっています。今後、コロナが収束したとしても在宅勤務を終了するつもりはありません。在宅と出社とを組み合わせるハイブリッドワークにする予定です。
ーそうなのですね。oviceはオフラインとオンラインのコミュニケーションにも役立つので、ぜひ引き続き活用いただければうれしいです。
井上:
在宅勤務時にも対面時に限りなく近いコミュニケーションができるようになったおかげで、拠点間の距離が、心理的にも物理的にも以前より近付いたことかなと思います。
他部門の人と話すことが増えたという声をよく聞いていて、気軽に上の階にいって質問するという行動がよく起こっています。業務上の課題解決の時間が一気に短くなり、とても良い傾向です。
井上:
新しいオフィスづくりとoviceの利用促進を並行し、「コミュニケーション」「コラボレーション」「イノベーション」を生み出す職場づくりをしていきます。oviceの利用促進に関しては、現在エバンジェリスト的に動いてくれている遠藤を含めたメンバーを中心に、ovice委員会を立ち上げようとしています。
目的はoviceを使ううえでのベストプラクティスの共有と不具合、不明点の解消。よりよく全社的にoviceを活用できるようになるために動いていきます。
遠藤:
当社のバーチャルビルは現時点で8階建てなので、いずれは各フロアから1人ずつ委員会に入れたいです。
新規ビジネス創出にもつなげていきたいですね。ビジネスコンテンツのバーチャル開催などを構想しています。