小中学生を対象としたオンラインスクール。同校はoviceを活用したメタバース校舎の他に、全国トップレベルの教師の授業、5~10人学級制の担任サポート、好きを探究する部活動、プロジェクト型学習といった特長を持つ。
不登校の小中学生を対象としたオンラインスクールNIJINアカデミーでは、oviceを活用して学校を運営しています。同スクールを設立した星野達郎 氏に、oviceを活用することでどのような学校生活を実現しているのか、インタビューしました。
ーNIJINアカデミーとはどのような学校ですか
NIJINアカデミーは、学校に行かなくても学力と社会性が豊かに育つ新しい学び場として、2023年9月に開校したオンラインスクールです。日本トップレベルの現役教師による授業も行っています。
不登校の原因は人間関係や学習進度にあるという調査結果がありますが、問題の根本には、小中学校では固定化された人間関係で学校生活を送る必要があることや、決められた進度でしか学習を進められないという仕組みがあると認識しています。
私は、子ども時代に学ぶ楽しさ、居場所があるという体験をしてほしいと願っています。勉強はその子の人生を照らすものです。また、不登校は子どもだけでなく、家族の幸せも損なってしまう事象だと思っています。
学校に代わる学びの選択肢として、学校以上に豊かな学び場を選択肢として持つことができれば、子ども一人ひとりが自分に合う教育方法で学べるはずで、不登校という事象自体がなくなると考えています。
教師陣の質の高い授業の他にもNIJINだけの特徴があります。それは学年を取り混ぜることで多様性を体現したクラス編成が実現していること、しっかりと体を動かせるホーム体育の授業、そして社会性を学べる日々の経験ができる点です。
ホーム体育では家でもできる簡単なエクササイズやダンスをして、楽しく身体を動かします。
脳科学の理屈に基づき、負荷の高い学習の前に取り入れています。周りの子たちが参加していることで参加する生徒も多く、体を動かすことで規則正しい生活になったといって、保護者の方にも喜んでもらえています。
校外学習や遠足も、住まいの近い生徒の保護者が企画し、実行されていますよ。
ーNIJINアカデミーではどのようにoviceを役立てていただいてますか
日々コミュニケーションをとることで社会性を学ぶことができると考えているのですが、oviceの場合「自分で距離感が選べる」のがとても良いなと思っています。
一人でいても、声を出していなくても、なんだかぬくもりを感じられる。oviceを使うことで、そんなオンラインスクールが実現しています。
実は、oviceでホームルームを開催している時に、中心から離れた場所にいる子も見られます。実際の学校だったら座っていないと注意されてしまいますけど、私たちはそのような参加の仕方も良いと思っています。
このように「同じ空間にいる」というコミュニケーションが可能なoviceなら、強制や同調圧力といったものも生まれないだろう、と想像しています。
ホーム体育でもoviceを使って、先生の近くにアバターで集合し、体を動かします。
ーオンラインで学校を開設することで、「場所の制限」をなくしていますね
私が小学校で教員をしていた時に、不登校で悩んでいる生徒に出会いました。彼女のような子どもが日本全国に約30万人います。どこか特定の地域の生徒にだけ手を差し伸べる…という発想は、私のなかにはありませんでした。
ーこの先のNIJINによるオンラインスクールの構想にはどんなものがありますか
いま当社には2つの考えがあり、オンラインスクールを運営しています。
この先6Gの時代が訪れれば、メタバース上で本当にぬくもりを感じることも可能になると思っています。そうすれば、メタバース上に学校があるということがもっと一般的になるのではないでしょうか。こうした世界を見据えて、一足先にメタバースに学校を作りました。
それと、海外の生徒と一緒に学ぶ「ワールドスクール」を作りたいと考えています。日本の人口減は避けられない未来ですが、国力や国際的プレゼンスをしっかり保っていけるように、教育の現場から、取り組んでいきたいです。
そのために、日本の教育の輸出、日本人の海外への抵抗感を無くす、そのようなビジョンを持っています。そうすることで、将来海外の人と一緒に働く未来に貢献できると考えています。そんなワールドスクールを、メタバースに学校を作る形で実現したいと思い描いています。
ー強い思いでスタートされたオンラインスクールの事業ですが、そのような大切な場にoviceをお選びいただいた理由について教えてください
一つ目は、oVice社の担当者のスピード感とはつらつとした印象です。生き生きとしていて、とても前向きな担当者さんだと感じました。そしてそのような方のいる会社と一緒に成長していきたいという気持ちになりました。
もう一つは、二次元のメタバースだという点です。体の形があるアバターではなく、丸いアバターで動ける特徴が、良いなと思いました。簡単に動かせますよね。
そしてアバターは凝っていないけれど「近付いたら声が聞こえる」というのはぬくもりが感じられるように思いました。
ー他のオンラインツールと比較して、oviceについてどのように感じてらっしゃいますか
oviceは「人がいるな」という感覚がずば抜けて強かったんです。たとえばマイクをオンにしたときに、まるで自分の鼓動が相手に伝わったかのような感覚を持ちます。
それと、ウェブ会議ツールとの比較になりますが、とにかく「疲れない」と思いました。ウェブ会議ツールはとても疲れるんですよね…相手の顔も動きも、自分の顔も絶え間なく見えるので、気を張ってしまうんだと思います。
あと、1秒で校舎に行けるというのも気に入っています。気軽に、忘れ物を取りに行く、みたいな感覚で、足を運ぶことができる場所です。
ー気軽に。
〇〇さんと話したいという目的を達成するのに、「この時間はあいていますか」というやりとりが必要ないんですよ。
NIJINアカデミーのスタッフからもよく、「達郎さん今来れますか?」って聞かれるんですけれど、このやりとりは、ウェブ会議ツールでのコミュニケーションを始めるのと全然違って、すごく「軽い」んですよね。
ー生徒にとってoviceを使うことのメリットはどこにありますか?
「子どもたち自身が空間設計できる」というのが、すごくいい、教育的価値がある、と思っています。
oviceは創作できる余地のある空間ですよね。校舎がoviceであることで、学校に子どもが主体的に関われるようになっています。
具体的な例を挙げますと、今も、壁面には子どもたちの書いた絵を飾っているんですけど、こうした装飾は子どもたちに「自分が作った学校」という感覚を与えてくれると思います。
この後は、冬の間に校舎を拡張する計画があり、街や校舎を設計する予定なのですが、この設計を生徒たちの参加するコンテストの形で募ろうかと思っているんです。
ーその他に、oviceの機能で学校運営に使いやすいと感じるものはありますか
掲示板ですね。1階には講師用の掲示板と、生徒用の掲示板を設けています。
講師用の掲示板では、授業のお知らせをしています。生徒用の方ではサークル活動のお知らせをしたり、といった目的で使っています。
ーサークル活動が活発そうですね
そうなんです。生徒たちから要望があってイラスト部とマインクラフト部、鉄道研究部が活動中です。
サークル設立には、カメラをオンにして顔を出しながら先生にプレゼンすることと、3名以上のメンバーがいること…等がルールとして決められていますので、今もメンバー募集のお知らせが出てますね。
ー顔出しとなると、難しい、ハードルが高いと感じる生徒さんもいるのでは
そのように感じる生徒は当然いると思います。ただ、私は教育者として、子どもがありのままでいられることは大切ですが、「そのまま」でいいとは考えていないのです。だから、このようなルールを設けています。
できなかったことができるようになる。それが教育の役割だと考えています。
ー科目授業はウェブ会議ツールで行われていますが、その理由は何でしょうか
画面シェアの映像の良さや、録画が簡単にできるかという点で決めています。
ーそうだったのですね…画面シェアは「高解像度を使用する」の設定をオンにしていただくことによって画像がきれいになりますので、一度試していただければうれしいです!
ー最後に、NIJINアカデミーがこれから目指す世界について紹介ください
「どこ中出身?」「私はニジアカだよ」…そんな会話が成立する日本になるといいなと思っています。
そのために、この先には、オンラインとオフラインのハイブリッドな学校を、全国に数百か所という規模で立ち上げるというマイルストーンを見据えています。
そして、学校が合わない小中学生に、「学校がダメでも、NIJINがある」と思ってもらえるようになりたいと考えています。
NIJINアカデミーの成長を通じて、全国に30万人といわれる不登校の小中学生に、居場所があることを伝えたいです。