株式会社LIXILトータルサービス(公式サイト:https://www.lixil-totalservice.co.jp/)
住宅用およびビル用の住宅設備機器・建材の販売・加工・施工、アフターメンテナンス、 建築工事の設計・施工管理および請負を行う。
全国に8支店・42事業所を有する株式会社LIXILトータルサービスは、バーチャルオフィス「ovice」を活用し、柔軟な働き方を実現しています。今回は、代表取締役社長 浅野靖司さまと、経営戦略部 鈴木智子さまに、柔軟な働き方を行う背景やそこに込めた思いなどを伺いました。
ー御社の事業内容や役割についてお聞かせください。
浅野社長:LIXILトータルサービスは、住まいの新築やリフォームされる際のLIXIL製品の工事・取りつけや日々のメンテナンスなどを行っており、LIXIL製品を利用いただくお客さまとの最初の接点となる会社です。より長く、安心して我々の製品をお使いいただける環境をつくることが、我々が主に担っている役割です。
日本の人口が減少傾向にあり、新しい家が増えにくい状況下で、直接お客さまとの接点を持つ立場として、お客さまのニーズをきちんと伺い、それに対応する事業をどう展開し、どのように価値提供していくかを日々考えています。
「いつでも どこでも あなたの立場で 技術と品質で暮らしに感動を実現」をミッションとし、全ての社員がお客さまに最高の体験を提供することを目指して取り組んでいます。
ー御社は柔軟で多様な働き方を推進されていますが、この背景にはどのような考え方があるのでしょうか。
浅野社長:企業としてお客さまにしっかりと価値提供していくためには、oviceの利用も含め、社員がどれだけユニークで、クリエイティブな仕事に切り替えていけるかが重要だと考えています。
そのため、ハード面やソフト面をきちんと整備し、社員がより働きやすい環境にすべく、この数年でデジタルを活用してテレワークの環境を一気に作り上げてきました。
それぞれの社員が状況に応じて働き方を選ぶことができ、個々の力が最大限発揮されることで、社員自身は会社に貢献できていることを実感できますし、それが会社の成長につながると考えているため、柔軟で多様な働き方ができる環境を整えています。
一方で、テレワークにより自由な働き方ができるようになったものの、逆に「不自由」だと感じる場面が増えてきました。
例えばチームで仕事をする場合、ちょっとした確認や相談をしながら進めることが多いでしょう。リアルな場では、「温度感」や「空気感」から、何となく「困っていそうだな」と感じ取ることができていました。しかしテレワークになり、そうした「空気感」が分からなくなったことで、コミュニケーションが減少して社員が孤独感を覚えたり、帰属意識が薄くなったと感じる場面もあります。
ーそうした課題を解消するため、さまざまなバーチャルオフィスを試されたと思いますが、そのきっかけは何でしょうか。
鈴木さま:バーチャルオフィスを検討し始めたきっかけは、コロナ禍で社員から「孤独感を感じる」といった声が上がってきたためでした。会社としてもDX推進に力を入れていたタイミングで、きちんとコミュニケーションができる環境を構築できるサービスを探していたところ、「バーチャルオフィスが良いのではないか」という話に発展しました。
複数のバーチャルオフィスを検討していましたが、LIXILでoviceを少人数でトライアルするという話を耳にしたことがきっかけで、自分たちでも5、6人で使い始めることになりました。組織内のさまざまな部署を意識的に徐々に巻き込んでいき、oviceの利便性を感じてそれを社内に自発的に共有してくれる社員が増えた結果、利用者増加につながりました。
ーoviceを社員に理解してもらうために苦労したことはありましたか。どのように乗り越えたかも含めお聞かせください。
鈴木さま:oviceで何ができるのか聞かれることは多かったです。口で説明してもなかなか理解してもらうことが難しかったため、「まずアクセスしてみてください」と伝えていました。アクセスしてくれた社員の中には、簡単に声かけできることに感動し、率先して使ってくれるようになった人もいます。
一方で、「電話があるので大丈夫」「話しかける人がいない」という人も一定数います。そうした方には「あなたに話しかけたいと思っている人は必ずいますよ」と伝えています。
浅野社長:全社員に一気に広めるというよりは、メリットを感じた人から徐々に広げていくという形を取っています。例えば、普段は工事に関わっておりほぼ毎日外にいる社員からすると、どんなシーンでoviceを使ったら良いのか想像がつきづらいと思います。ただ、そうした社員でも、相談のためにovice上にいるバックオフィスの社員に声をかけるということは起きています。
これまでであれば、電話などで特定の人にしか相談するしかなかったなかで、oviceでは相談相手の周りにいる人からもフォローしてもらえるため、回答が早く得られやすいです。そうした体験から、oviceのメリットを感じる人も出てくるでしょう。
ー現在のoviceの活用状況について詳しく教えてください。
鈴木さま:毎朝出勤時間になると、多くの社員がovice上に出社してそれぞれの席に「座り」、必要に応じてovice上で画面共有をしながら会議をしたり、立ち話をしたりしています。外出の予定がある社員は途中で退出しますが、多くの社員が一日中ovice上にいる印象です。
先日1ヶ月間のデータを確認したところ、1人あたり毎日平均7時間以上oviceに滞在していることがわかりました。社員がoviceを「就労場所」としてとらえているのだと実感しました。
現在6つのoviceスペースを使っていますが、そのうちの1スペースのみ、1人あたりの平均滞在時間が6時間ほどでした。なぜかと思い詳しく見てみると、そこはパートの方が多いスペースだったんです。こうした違いもデータとしてはっきり見えるので、マネージャーからすると労働時間の管理もしやすいのではないかと感じました。
ーかなり定着度が高いようですが、ovice導入前後でどのような変化が見られましたか。
鈴木さま:アバターでほかの社員が動いているのが見えるので、孤独感を軽減できたのではないかと思います。
また、ovice上での立ち話でちょっとしたアイデアが共有できるという体験も、今まではなかったものです。物理的な距離が問題で会えない人同士でも、oviceでなら会話をすることができますし、全国の人がoviceに集まり会話することで、いつもより話が弾むということもあります。ovice上で会話した人同士がリアルで会った時、対面での会話は初めてなのに既に会ったことがあるような感覚を覚えるのもおもしろいです。
ーoviceを活用するなかで、おもしろいと感じたエピソードや印象に残っているフィードバックなどはありますか。
鈴木さま:各部署がovice上に掲示板を立て、有休の日程やその日中に終えてもらいたい重要なタスクを書き込み、情報共有を行っているのが印象的です。
また、oVice社の担当者からの提案で毎朝ラジオ体操を行っており、毎回10人ほどが集まっています。自宅でお子さんと一緒にラジオ体操に参加している社員もおり、その様子を嬉しそうに話してくれました。家庭内でのコミュニケーションのきっかけにもなっているようで、お子さんから「おもしろい会社だね」と言われた社員もいるようです(笑)
oviceに慣れてくるとバーチャルと現実の感覚がいつしか一体化してしまうようで、レイアウト上に「もう少しイスがほしい」というリクエストが来たのも、想定外で興味深かったです。
ー社長の立場で、oviceにいて何か気づかれたことはありますか。
浅野社長:私がいる場所はソファのある応接室のようなデザインになっており、掲示板を置き「いつでも声をかけてください」と書いています。気軽な仕立てだからか、社員からよく声をかけてもらっています。
また、私自身もラジオ体操に参加するようにしているため、それもコミュニケーションしやすい空気づくりに一役かっているのかもしれません。
ー定例会議では議題にならなかったものの、ちょっとした会話がきっかけで思い出し、仕事に抜け漏れがなくなるということもあると思います。oviceを使うことで、仕事の進め方などで変化を感じる面はありましたか。
浅野社長:oviceがなくてはならないものになっているチームもあれば、職種によってはまだそうでないところもあります。
ただ、日々現場で起こる事象で同じものは一つとしてなく、対処用のマニュアルはあるものの、それで網羅できないことは非常に多いです。こうした状況下においては、周りのチームからいかに知恵や経験を借りるかが重要です。トラブルが発生した際、カレンダーを確認して関係者の空いている時間を見つけ、ビデオ会議を設定するのでは遅すぎることも多いです。その際にoviceがあると、関係者に声をかけ、急いで2、3人で集まって対処することができています。
私自身も、全国8支店の支店長と会話する際、これまでは移動時間も含めて1週間ほどかけて会うことがありましたが、oviceなどを活用することでいつでもすぐに話ができるようになっています。
また、新入社員として入社した方々にとっては、「困っていることがあるものの会議を設定して聞くほどではない」ということも多々あると思います。oviceがあることで、先輩が空いているタイミングで声をかけ、困りごとを解消するということもできると感じます。
ー経営の視点から、今できていることを今後大きくプラスにできるのではないかと考えている領域などはありますか。
浅野社長:普段仕事ではあまり接点がない社員同士であっても、何かのきっかけで会話するということは大事だと感じています。バーチャルでありながらもそうした交流ができる空間が用意され、そこでの会話から何かしらの気づきが得られるのではと期待しています。
現在は部門別にoviceのフロアを設けていますが、部門を超えて気軽に会話できる場所を作ってみたいです。全く違う部署でありながら、よく顔を見る社員同士が今どのような仕事をしているのか会話しあえる環境は大事だと考えています。
ー働き方がますます多様化するなかで、今後御社およびLIXILグループとして社会にどのような価値を提供していく予定でしょうか。
浅野社長:多様な価値観が共存し、社員全員がそれぞれの力を発揮できるようになることで初めて社会に貢献でき、企業としての価値を生み出すことができると考えています。そのため、その基礎である社員のコミュニケーション、さらには働く意欲を生み出すような環境を整えていくことは重要であり、oviceによってそれが実現できると期待しています。
ーコミュニケーション円滑化のためにオフィス出社を選択する企業も多いと思います。その中で、御社としてはどのような働く環境作りを行っていく予定ですか。
浅野社長:「リアルをもっと増やそう」、「バーチャルにシフトした方が良いだろう」ということではなく、会社側として準備する必要があるのは「選択肢」だと考えており、社員それぞれが「選ぶ」ことができる環境を作っていきたいです。
社員それぞれの家庭の環境、通勤環境、業務は千差万別です。また、例えばオペレーションに近い仕事を担当しており、普段はテレワークを基本としながらも、部署を超えたディスカッションが必要な際はリアルな空間に集まった方がアイデアを出しやすいということもあるでしょう。
社員に特定の働き方を強制するのではなく、自主的に考えて働き方を選べる環境を整えていきたいと思っています。