浜松市UD・男女共同参画課、浜松未来総合専門学校
ユニバーサルデザイン(UD)の普及に積極的に取り組んでいる浜松市。毎年、小・中学生を主な対象としたUD 教育を行っています。また令和元年(2019年)には、浜松市は「デジタルファースト宣言」を行い、デジタルスマートシティ政策の推進にも取り組んでいます。(参照:https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/digitalsmartcity/index.html)今回の ovice を活用したイベントは、浜松市の「UD・男女共同参画課」と「デジタル・スマートシティ推進課」、浜松未来総合専門学校が連携・協力して開催しました。
森下:
浜松市UD・男女共同参画課は、能力や年齢、性別、国籍などの違いを越え、すべての人が暮らしやすい環境をつくることを目的に、さまざまな取り組みを行っています。
浜松市には、アクト通りというベンチや階段などにユニバーサルデザインが施されているエリアがあります。これまで10年以上にわたり、市内の小学生4年生から中学生を対象に、アクト通りにあるユニバーサルデザイン施設の見学を通じて、ユニバーサルデザインについて学んでもらっていました。
今回は、浜松未来総合専門学校の協力を得て、このアクト通りを再現したバーチャル空間をoviceで作り、小学4年生がこの空間にログイン。オンライン上でユニバーサルデザインを見学してもらいました。
森下:
実は、今回のようなオンラインでの開催は初めてです。昨年(2021 年)までは、小中学生にユニバーサルデザイン施設があるエリアに来てもらい、市民リーダーの方に講師を務めてもらう、という形をとっていました。
森下:
元々、部署内で事業のデジタル化の推進が掲げられていました。こうした中で、現地に行かなくてもユニバーサルデザインを理解できる手段を模索していたのです。
というのも、どうしても現地見学となると、台風や、近年流行している感染症など、中止の判断をしなければならないケースがあります。また、時期的にも熱中症のリスクも残ります。
そういったリスクを減らし、よりハードル低くユニバーサルデザインを理解する手段として、バーチャル空間を利用したイベント開催にチャレンジすることにしました。
oviceについては、浜松市のデジタル・スマートシティ推進課から紹介されました。そして、産学連携の領域でこの部署が付き合いのある、浜松未来総合専門学校と連携して開催までの準備を進めていくことになりました。
中島:
浜松未来総合専門学校は、次世代の職業人・技術者を養成し、地域・産業の振興に寄与することを目指した専門学校です。2021 年の後期にユニバーサルデザインについての授業を立ち上げました。
お話をいただいた時に、「オンライン上でユニバーサルデザインを再現する」取り組みについて共感し、授業の題材としてもぴったりだと感じました。
参加した学生は6名で、グラフィックデザイン・デジタルコンテンツ・CAD デザイン・コンピュータービジネスを学んでいます。半年ほどかけて、実際の現地調査などを通じてコンテンツを設計しました。今年(2022年)の3月ごろからoviceの利用を始め、レイアウトを完成させました。
中島:
「現実空間の再現」にこだわって取り組みました。アクト通りは階段の手すりやスロープ、多目的トイレなどさまざまなユニバーサルデザインの機能を持っています。それをオンライン上で再現するとなると、徹底的な取材が必要です。
バーチャル空間では、音声案内板そのものの様子や階段の手すりなどのユニバーサルデザインについて、oviceの固定オブジェクト*を使って動画やスライドを埋め込み、近寄ると動画や画像が見られるようにしました。
こうした施設・設備を紹介する動画も、浜松未来総合専門学校の生徒が制作したものです。
* バーチャル空間上で、カメラオンでの会話や画面共有、動画の再生などができるoviceの機能
森下:
イベントは2時限に渡って行われたのですが、途中の休憩時間も夢中で取り組んでいる児童が多く見られました。日頃に増して集中していたそうです。タブレット画面を見る、という学習方法は、集中しやすいのかもしれません。
「ovice上で再現されている実際の場所も見に行きたくなった」という意見も出ていました。
ー参加された児童たちの満足度が高かったようで嬉しく思います。主催者目線での感想もぜひお聞かせください。
中島:
固定オブジェクトの活用など、空間で再現できるものの幅が広いと感じました。ovice のプラットフォームが非常にシンプルで、オリジナルのカスタマイズが非常にやりやすかったことは製作の手助けになりました。今回デザインを担当した学生たちも楽しそうでしたね。
今回は小学生用教材ということで、機能を極限まで限定したかたちで使用していますが、会話機能を使ったり、様々なコンテンツを用意したりなどすれば、まだまだできることがいろいろあるだろうと感じています。そのような意味でも ovice 自体が実に「ユニバーサル」なプラットフォームだと思います。
参加した小中学生が、操作に困ることなくあちこち移動していたのも印象に残っています。
鈴木(政):
例えばダブルクリックで瞬間移動できる点など、とても操作性が良いと感じました。使いやすさの点でとても満足しています。それと私個人の感想ですが、バーチャル空間のデザインを昔のゲームのように感じ、こうした点では親近感を抱きました。
森下:
他の小・中学校にも体験してもらったり、一般向けにも市のホームページに公開し体験してもらったりします。
7月16日から8月8日の間、市のホームページでoviceを公開していました。期間中、約30名の一般の方が自由にバーチャル空間を体験しました。
<参照>UD学ぶバーチャル空間 浜松・追分小で体験会|中日新聞
鈴木(大):
未成年が利用することや、ログインするための機器をどのように用意するかなど、バーチャル空間を活用したイベントを継続して開催・市民に参加いただくためには調整しなければならないこともあると感じています。
それでも、市民や学校現場でユニバーサルデザインを学ぶツールとしてこれからどんどん活用していきたいと思います。学校を越えた、児童・学生同士の意見交換や交流にも期待しています。