不登校や不登校気味の子どもたち、その親御さんの心やすまる居場所作りを行っている。2021年2月28日に「不登校だっていいじゃん~簡単には言葉にはできないあの頃の気持ち~」というテーマで、実際に不登校を経験した児童・生徒の体験談の共有や、不登校のお子さんを持つ親御さんや教育関係者の交流会を開催。
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不登校の子どもたちは、さまざまな理由で学校に行かないという「選択」をしています。それぞれが置かれた状況や考え方は千差万別。今回はそうした子どもたちや親御さんの居場所作りを行っているフューチャーCプロジェクトにおじゃまし、バーチャル空間oViceを使って初めて開催されたオンラインイベントの様子を見学しました。
今回のイベントには、実際に不登校を経験した学生や教育関係者、不登校の子どもをもつ親御さんなどが参加しました。
イベントのはじめは、不登校を選んだことがある学生や不登校支援を行う学生による「本音トーク」。みんなでYouTubeを鑑賞し、感想をチャットなどで送りあいました。
配信されたYouTube映像では、
など、当事者から赤裸々に語られる映像を見て、参加者それぞれが思うところがあった様子でした。
チャット欄では「話を聞いて、ピアカウンセリング(同じ背景を持つ人同士が対等な立場で話を聞きあうこと)が大事なのではないかと感じました」といった、不登校というテーマについて日ごろ考えている方ならではのコメントなどが見られました。
当事者による「本音トーク」の後は、不登校に関する質疑応答の時間が設けられました。「本音トーク」での登壇者と、今回のイベントの運営側のメンバー数人がミーティング機能を使って顔を出し、チャットで送られてきた質問に回答していきました。
「どんな学びの形だったら学校に行きたいと思いますか」との質問には、「田畑に囲まれて自由な学びを提供するフリースクールなど、さまざまな学びの形が増えてきている。自分はどの空間にいることが幸せなのかなど、学びを選択できると良いのではないか」といった、学生が思い思いの学びを得て成長していく場所が今後必要になるとの回答がありました。
また、「不登校の子どもに対し、先生たちにこうあってほしいという希望はありますか」との質問に対しては、「ある不登校の児童・生徒から、『フューチャーCは何をするかを児童・生徒たちが決めることができる。児童・生徒たちがロケットで、先生たちはあくまでもその後方支援をするエンジンだと感じた。しかし学校はそうではなく、何をすべきかがまず決められていて、先生たちがロケット、児童・生徒たちがエンジンになっているところに違和感を覚えた』という言葉をもらった。そうした学校のあり方自体を変えていく必要がある」と、不登校に普段から触れている学生や先生ならではのコメントが出るなど、不登校に関するさまざまな意見を共有しました。
イベントの締めくくりはグループ別の自由交流。oVice上で4つのグループを作り、不登校というテーマについてさまざまな視点で意見を述べ合いました。
参加者は自由にグループ間を移動しながら、興味のあるテーマを話しているグループを見つけ、そこで議論を繰り広げていました。
不登校の子どもたちも含めた、今後の教育現場における「学び」のあるべき姿について語るグループ。不登校の児童・生徒と話した印象を「正直初めは不登校に対してネガティブな印象があったが、実際接してみると、気遣いができるいい意味で普通な子が多かった。自らの思い込みで選択肢を狭めてしまっている子も多いので、個々の状況に応じてサポートしていきたい」など、不登校に実際に触れて感じた率直な印象を共有しあうグループ。
「給食の時間のみの出席にしたり別室登校などを提案したりしたが、教室不足などが理由で断られた。ただ、高校には行きたいと言っているので、行ける範囲で行かせたい」など、不登校の子どもをもつ親としての悩みを述べ、コメントしあうグループなど、個々の状況や思いを伝えあい、サポート方法などについて意見交換をしていました。
フューチャーCプロジェクト 代表 古賀 友美(多々良)
今自宅にひきこもっているお子さんがバーチャルな居場所の子どもたちと繋がることにより、外に出る機会ができるのではと考え、土井氏に協力をお願いして居場所作りを行いました。今回トークイベントをオンラインで開催したのは、コロナの影響でリアルなイベントを開催することが難しかったというだけでなく、大分県内外の多くの方々に学校に行かない選択肢があるという事、不登校の実態を知っていただきたかったからです。
今回参加された親御さんや関係機関の方々からは「子どもたちの本音を聴くことができて、本当に勉強になりました」、「子どもと一緒に観ていましたが、真剣な表情で見入っていて、このイベントが終わった後とても穏やかな表情になり、子どもにとって何かを感じれたのではないかと思います」などさまざまな声が寄せられました。
今後のことはまだ模索中ですが、フリースクールの子どもたちやひきこもり状態の子どもたち、その親御さんが本音を話せる場をつくっていきたいと思っています。今回のようなイベントを行いながら、このバーチャルスペースの存在を知ってもらい、悩んでいる多くの子どもや親御さんの心やすまる居場所となればと思っています。
株式会社Doit 代表取締役 土井 敏裕
学校に行かない選択をした子どもたちは、全国に16万人以上います。その子どもたちの選択肢はたくさんあるとはいえず、システムや制度の問題も多くあります。義務教育は権利であり、義務ではありません。子どもたちが何を選び、誰とどんな時間を過ごし、より良い社会の担い手になるかは、自分で選択できると思っています。
その一つの選択肢として、バーチャルスペースのような場所もあっていいと思います。バーチャルの中でも人間関係やつながりができ、それによって救われる子どもたちもたくさんいるはずです。今の世の中だからこそ、テクノロジーの力を使って一つの居場所を提供できれば、と思います。みんなが気持ちよく、楽しく使えるような運用方法を模索しながら、子どもたちのアイデアをベースにして創っていきたいです。