学術学会をoviceで開催、成功のための工夫と道のり [第33回日本サイトメトリー学術学会]

2024-04-01
利用組織名

第33回日本サイトメトリー学会学術集会(公式サイト:https://www.33jcs.com/

取材対象者
高橋 良 先生(杏林大学医学部講師、第33回日本サイトメトリー学会学術集会 会長・総合制作)
利用人数
約300名
企業・イベント概要

一般社団法人日本サイトメトリー学会学術集会(https://www.cytometry.jp/)が年に1度開催する学術集会。2日間にわたり、講演、ポスターセッション、シンポジウム、懇親会をオンラインで開催。配信会場を石川県金沢市に設営し、実行委員会のメンバーは同会場に集まり、演者の先生方はリモートで接続する形で配信を行った。

活用のポイント
  • Web会議ツールではコミュニケーションが一方通行となってしまい、学会の開催には不都合を感じていたため、oviceでの開催を検討。1年ほどかけて準備を進めた
  • 特に検討を重ねたレイアウトで重視したのは「遊び心」、業界関係者が喜ぶデザインを各所にちりばめた
  • ovice担当者による「参加者向け事前説明会」を利用することで、学会参加者により深くovice操作を理解してもらえる可能性
  • 配信は「金沢未来のまち創造館」から。回線の強さ・設備を備えた“映える会場”

2023年7月22〜23日に行われた第33回日本サイトメトリー学術集会は、Web会議ツールとoviceを使って開催されました。学会会場としてoviceを選んでいただいた理由や、使ってみた感想をお伺いしました。

オンライン学会の会場を検討。他社製品になかった“使いやすい”ポイント

ー2021年、2022年のオンライン開催ではWeb会議ツールをお使いになったそうですね。

2021年と2022年にはWeb会議ツールを使って開催していました。しかし、Web会議ツールのコミュニケーションは一方通行だというご指摘を多くの方からいただき、何とか改善したいと考えていました。

学会につきものの「質問」に関しても、Web会議ツールでは、大人数のいるところでなかなか発言しにくい、意図したように伝わらないといった課題があると感じていました。

そのような中で、世の中ではメタバースがにわかに注目を集めており、私自身も国立天文台野辺山宇宙電波観測所さんが二次元のメタバースを使って開催したイベントに参加することになりました。

ーどのような体験でしたか?

oviceではないのですが、観測所の象徴である電波望遠鏡を含めてデザインされていたバーチャル空間で、非常に趣があるなと感じました。

ーそちらのサービスは最終的には学会会場としてはお使いにならなかったのですね。

そうですね。レイアウトの設定が複雑であったり、会計も国内で完結しなかったりと、不便に感じて利用を諦めました。

ーoviceを決めてくださったのはいつ頃でしょうか。

ちょうど開催の1年前にあたる、2022年の7月頃です。oviceのデモ体験スペースに入室し、フリープランでの利用を開始しました。いろいろな設定について、調べながらovice会場の準備を進めました。

▲現在では、追加有償サービスでoviceのスペースの設定や、当日の司会・運営が利用できる(ovice Event 公式サイト

レイアウトはメインセッション・ポスターセッション・懇親会用を準備

ースペースのレイアウトはどんなものを、どのようにして用意されたのですか?

いろいろと検討し、最終的に「日本旅行」をテーマに定め、発表者の先生の所属する大学や組織と関連付けたデザインを、登壇後に来場者と交流いただく「アフタートークセッション」エリアに施しました。

壇上にあたる中心部とその周辺の聴講者が集まるエリアは、会長が所属する杏林大学三鷹キャンパスにほど近い、東京の井の頭公園から名付けて「井の頭メインホール」としています。

会場となるoviceの収容人数は最大500名ですが、心地よく過ごせる上限人数は300名ほどだろうと考えていました。100~300名がメインホールに収まるようなイメージで整えていきました。

東京を起点とする、各鉄道路線もデザインしました。路線のイメージカラーと色を一致させたのもこだわりポイントです。

また、oViceに設置するミーティングオブジェクトや会議室などのスペースオブジェクトのカスタマイズは他社サービスと比べて、とても簡単でした。

▲oviceスペースの会場レイアウト(メイン)

ーどんな点が昨年、一昨年と異なりましたか。

「アフタートークセッション」がしっかり実施できるようなエリアを用意した点です。学会では、講演を終えた方にもっと質問をしたい、挨拶をしたいといった思いを持つ方も少なくありません。

Web会議ツールではこうしたリクエストに応えることは難しかったため、別のオンライン会議の場所を設けてコミュニケーションをしたい方だけでやりとりしていただくということはありませんでした。

今回は、会場右側に用意したサテライトホールのエリアに誘導して、そこで皆さんに心行くまで発表者と交流していただきました。ご覧のようにデフォルメした路線図となっているので「中央線でこぶちざわへ、そこで小海線に乗り換えてください」なんていうふうにアナウンスしたりしました(笑) これは実際の場所に旅行する場合にも役立つようになっています。

▲メイン会場で講演終了後、サテライトホールに移動してアフタートークセッションを開催。いわゆる「続きはフロアで…」を実現。

ーエンタメ心も満たされますね。

そうですね、本当にいろいろなアイデアがあったのですが、スポンサーをいただいて開催している学会でしたので、著作権には注意を払いました。

ー左側中央少し下では「企業展示」も開催されたのですね。

はい、学会ではよく見られる「企業展示」ですが、今回は1社から出展いただきました。

先方担当者と打ち合わせを重ね、最終的にはそれぞれの商品画像に近づくと説明のYouTubeが自動的に再生されるような形で展示エリアを作り、またフォームを設置してアンケートに回答してもらえるようにしました。

▲oviceスペースの会場レイアウト(メイン)の左下、企業展示の会場となっている。

「よろず相談所」と名付けた会議室は、展示はされていませんが、来場者がスポンサー企業さんと会話する際にお使いいただけるように用意したものです。外部からは会議室内の会話は聞こえませんので、他の参加者さんの「耳」を気にせずに質問ができます。また、商談の場としても活用いただけました。

ーポスターセッション(一般演題発表)でも、素敵なレイアウトを利用されていましたね。

三つの丸に、演題番号を区切って割り振り、聞きたい講演のエリアに集まっていただきました。

我々は普段、細胞を測定する装置や細胞を分離する装置(セルソーター)を利用しているのですが、ポスターセッションのレイアウトはその装置で細胞が分離する様子を表現しています。

入室したアバターが、まるで分離された細胞であるかのように見えるサイズで描かれているのもポイントです。

「ビジター」アカウントでアクセスした人に割り振られるアバター画像も自分たちで設定できると知り、8種類の血液細胞の画像をセットしておきました。

▲oviceスペースの会場レイアウト(ポスターセッション)
▲アバターにセットした、血液細胞の画像

▲実際に入場している様子。血液細胞のアバターが会場に集う。

ー懇親会会場のレイアウトもとても素敵です。

「アバターで並んで人文字を作る」というのをやってみたかったんですよね。oViceさんの過去のイベントで「こんなこともできるんだ!」と気づかせてもらったアイデアです。

▲oviceスペースの会場レイアウト(懇親会)

懇親会では、マルバツクイズ大会やじゃんけん大会のためのレイアウトを使ってイベントも開催しました。商品をご提供いただいた協賛会社名を提灯にいれたりもしました。

▲oviceスペースの会場レイアウト(マルバツクイズ大会)

▲oviceスペースの会場レイアウト(じゃんけん大会)

アバターでovice上を自由に動く体験ができると、満足度も向上するのだということが、開催後のアンケートからうかがい知ることができました。

配信は「金沢未来のまち創造館」から。回線の強さ・設備を備えた“映える会場”

ースポンサーにも名だたる企業が並んでいますね。

そうですね。学会の参加費だけではまかなえないため、多くの企業にスポンサーしていただきました。とはいえ、オンラインにすることで、物理的な会場の確保や運営サイドの人件費の面で、非常にリーズナブルに開催できたと感じています。

ー今回は実行委員の先生方に、配信会場である「金沢未来のまち創造館」に集まっていただいたのですね。

完全にリモートで実施できるため、集まる必然性はなかったですが、トラブルの対応や、モチベーションも高まるだろうということで、今回はこのような形での実施を決めました。

▲oviceスペース右下に「配信拠点」としてレイアウト

こちらの施設はもともと小学校だったところをリノベーションしているのですが、高速なインターネット環境があって大変よかったです。会場の雰囲気もとても素敵なのです。

東京都内のレンタル会議室も検討しましたが、配信環境を整えることのコストや、配信映像のそっけなさがネックでした。

配信会場では、背面にオンライン会場を投影する形で進めました。

▲配信会場での記念撮影

気を付けたこと・次回気を付けたいこと

ー進行の工夫について教えてください。

今回初めてoviceを使うということで、抵抗感のある方もいるだろうと考えました。そのため、事前準備として、午前中はWeb会議ツールで、午後はoviceで開催という進行にしました。午前中のWeb会議ツールでのセッションの時間を15分程度使って、oviceの操作方法を案内しました。

MCにもこだわりました。参加者に進行も楽しんでいただきたくて、私の知人のFMラジオ局のパーソナリティに依頼して進行を担当いただきました。その場の話題や雰囲気に合わせて進行いただけるので、まるでラジオを聞いているかのように参加者の方に楽しんでいただけたと思います。

ジングル(場面の切り替わりなどを分かりやすく伝えるために再生される短い音源)も活用し、さらに最先端のAI人工音声合成システムも活用し、幕間動画やエンディング動画を作成しました。

  <エンディング動画>

開催中の配慮として、トラブルに対応できる人員を確保しておくことも大切だと思います。

ー15分間の説明のほか、皆様にどのように操作を案内されましたか?

PDFの冊子とYouTubeで、案内をしました。

特に一般演題の先生には画面共有などご対応する必要がありますので、「バーチャル会場への入場方法と基本的な使い方」「ポスターディスカッション練習方法」の二編を公開しました。

  <ポスターディスカッション練習方法のYouTube動画>

ご招待の先生方の場合「これを見ておいてください」というわけにはいきませんので、実際のovice会場にお越しいただいて、操作方法をご案内しました。

今であればオプションの「参加者向け事前説明会」を利用したと思うのですが、サービスリリースのタイミングよりも学会の開催が早かったので…利用できず残念でした。

▲追加有償サービス(ovice Event 公式サイト

いつも説明会の対応をされているoViceの担当者の方の言い回しなどとても参考になるなと感じています。oViceの導入を検討されている方は、ぜひ体験会・説明会に参加してみてください。

ーそのほか、oviceならではの注意点には何があると思いますか?

リアクションの案内をなるべく早い段階でしてあげると、参加者も反応しやすく、場も盛り上がるので良いと思います。

要望としては、ミーティングオブジェクトの範囲が真円となっていますので、今後自由な形に設定できるようになるといいなと思いました。

ーoviceを使った学会開催に、大変役立つ情報をたくさんシェアいただき、ありがとうございました。

我々の業界では、お気に入りの機械メーカーを持つ研究者も少なくありません。今後oviceを使って、製品への愛を語るユーザーフォーラムを開催するなどできたら楽しそうだな、とも想像しています。

2024年7月6〜7日に開催する第34回日本サイトメトリー学会学術集会(https://34th-jcs.com/)では、いよいよoViceだけで学会を開催します。現在、準備を進めているところですが、第33回の反省を踏まえて、よりスムーズに進行させたいと思っています。

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